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【特別インタビュー】長野県が目指す持続可能な観光とは?長野県観光機構×Vpon JAPAN(前編)

はじめまして。Vpon JAPANインターン生のMamiです。

Vponでインターンを始めて早くも2ヶ月が経とうとしています。初めてのインターンシップなので課題は山積みですが、優しい社員さん方のサポートもあり、充実した日々を過ごしております。私の強みである行動力と元気を武器に、何事にも挑戦中です!

Vponでインターンとしての挑戦を開始して間もないですが、この度、Vponインタビューという企画を持たせていただくことになりました!

Vponインタビューとは、現在Vpon JAPAN唯一のインターン生である私Mamiが観光のキーパーソンの方々に観光業界のリアルなお話を伺う企画です。

記念すべき第一弾として、平素お世話になっている長野県観光機構様にご協力いただき、観光施策に関するインタビューを行いました。

そこに暮らす人も訪れる人も“しあわせ”を感じられる世界水準の山岳高原リゾートを目指す長野県。避暑地として有名な軽井沢をはじめ、人気のスキーリゾートである白馬村などには、国内外から多くの観光客が訪れています。さらに、県行政は信州リゾートテレワークを推進しており、ワーケーションの環境整備やビジネスパーソンの受け入れに力を入れています。

 

今回は、長野県観光に携わり、それぞれ異なったバックグラウンドやキャリアを持つお三方に話を伺いました。

矢沢 哲也さん

長野県観光機構 デジタルマーケティング部 部長。

行政の職員として、長野県観光のデジタルシフトを担当。その後、長野県観光機構へ異動し、現在は3年目を迎えている。

Kさん

長野県観光機構アドバイザー。

観光業の経験がないからこそ、何か変えられるに違いないと信じている。キャンプ愛好家。

Sさん

数多くのメディア媒体に編集者として携わる。2016年に東京から長野へ移住。

長野県観光公式サイトGo NAGANOで編集長を担当。

これまでの観光の問題点

Mami:学外活動として観光業に携わってきて、日本の観光施策は観光客の質や旅行の質よりも、何人訪れたかや消費したかの量に焦点を当てていることに疑問を感じました。特に、私はインバウンドの方々と多く関わってきたので、実際に日本での観光にストレスを感じている姿を目の当たりにした時は、ショックを受けたのと同時に申し訳なさも感じてしまいました。

コロナ禍以前、長野県が直面した観光の問題はありますか?

矢沢さん: 旅行はレジャー・遊びと言う認識が広がって50年が経ち、送客の名のもとビジネスが起こった結果、観光業が盛んになりました。しかし、観光業界の方々は、このビジネスの流れは早晩立ち変わるのでは?と薄々感じていたと思います。そして、この感染症拡大によって、数年かけて行うような業態転換の課題が、一気に目の前に来てしまいました。

インバウンドに関しては、ここ数年は白馬、野沢などのメインのディスティネーションだけでなく、サブディスティネーションになるエリアにも長期滞在を中心に、右肩上がりでお客様が来ていたので、磨かれた要素が数多くありました。

しかし、例えば、スキー場周辺の宿泊施設は平日の需要は右肩下がりで、ここ数年はその空きをインバウンドのお客様が完全に埋めていました。そこは、課題として捉えています。

Kさん: この質問に一言で答えると、消費者(旅行者)が求めているモノと、観光事業者側が提供しているモノの価値観のズレが一番の課題だと思っています。矢沢さんのお話の通り、これまでは大量生産・大量消費時代で、観光もまさにそれでした。

効率化を重視するために、大箱を作り、お客さんをたくさん入れて、さばく。全員に対して一律同じサービスを提供することが、これまでの観光業のあり方だったと思います。

僕の仮説では、一番の要因は“箱”があることに問題を感じています。実際、今の旅行者はもっと違うものを求めており、観光業者側は気付いてはいても、手を打てていないのが現状です。もちろん、すでに何百人という収容のキャパを抱えている施設からすると、一人一人のニーズに合ったサービスを提供するには、追加で従業員を雇わないといけなく、利益のことも考えると業態転換が難しいですよね。

しかし、これも限界が来ているので、コロナを契機にブレイクしていかないと次の時代の観光は開けないのでは?と思っています。

Sさん: かれこれ40年近く、仕事やプライベートで海外を中心に様々な場所へ旅をしてきましたが、観光地において、決定的に普遍なものがあります。それは、観光地にもヒエラルヒーがあるということです。

ヒエラルヒーが設置されると何が起きるかというと、旅行者のお金の使い方にきっちりとした区別化ができます。その結果、マーケットのターゲットが絞りやすくなり、誘客対象の方々へのサービス形態の質が明確化されるという利点があるんです。

反して日本は、なぜかスーパーフラットな道に進んでいて、海外ではあり得ないのですが、お金がある・なしに関わらず、高級ブランド品を持ったりしています。この現象は物だけではなく、リゾート地においても同じことが起こっています。

例えば、オーストリアには、レッヒという世界最高のスキーリゾート地として知られている村があります。白馬の大体三分の一ぐらいの面積しかありませんが、ヨーロッパの貴族や王室、当時は故ダイアナ妃もよく訪れているほどヒエラルヒーが確立されており、白馬とは大きく異なっています。

京都は階級社会に合わせたサービスがありますが、長野県だけではなく、ニセコなど他の地域ではまだ対応が不十分なんです。

僕個人としては、階級に合ったセグメントを作ることが観光の概念の中では、非常に大事なことだと思います。

レッヒの5つ星ホテルで、故ダイアナ妃も宿泊したHotel Arlberg Lech。レッヒは白馬村の姉妹都市でもある。​(参照:Hotel Arlberg Lech)

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白馬五竜にあるゲレンデ。アルプスの絶景とパウダースノーを求めて、海外から足を運ぶ旅行者も多い。

Mami長野県視点でコロナ禍に変わったことはありますか?

矢沢さん:人がいるところに行くみたいなスタイルではなくて、密じゃないところに行くのは確実に起こっています。象徴でいうと、キャンプ場みたいなところですかね。

これまでだと関東近辺に旅行へ行くとなると、「長野だとちょっと遠いよね」と言われていましたが、予約の状況とかを聞くと確実にキャンプの需要が増えているのは間違いないです。また、公共交通機関を利用しない、車などのドアtoドアの移動が増えています。

長野県内の変化としても、他県と同様にマイクロツーリズム的な動きは確実にあります。長野県は、南北に212kmもの距離があるくらい広い県というのが特徴です。長野県も県民割を行なっているのですが、アウトバウンドで他県へ訪れていた方が、県内の魅力を再発見できているという点において、エリアの広さは有効に効いていると考えています。

Kさん: 全国で言われているような話だと、旅行の少人数化、予約までの検討のリードタイムが短縮、休日に集中していた旅行の分散化などあり、これは長野県も他の地域と同様に影響があると思っています。

長野県は軽井沢を中心にワーケーションへ力を入れていて、他の地域もキャンプとワーケーションを組み合わせるなどの取り組みを行なっています。

長野県信濃町にある、やすらぎの森オートキャンプ場。キャンプ場まで高速のインターネット回線が引き込まれているため、キャンプをしながらPC作業もできる。

政府主体のワーケーション市場に感じる違和感

Kさん:僕個人的に、このワーケーションという市場に懐疑的に思っています。というのも、政府主導にワーケーションを促進させていますが、加速するための就業規則の変更や社内制度の見直しが不十分なんですよね。また、周りでワーケーションをしたい、という声もあまり聞きません。

ただ、今後の世の中に期待することとしては、働くことの場所面・時間面からの解放です。決められた時期でしか旅行できなかった人たちの働き方が変わり、個人レベルで旅行をすることの選択肢が増えると、新しい需要が出てくるのでは?と思っています。その中でも特に、レジャー業界の動きには注目しています。

Sさん: 長野県も含めて、現在では行政が主体となっているワーケーションの概念は古いと言われています。これは何かと言うと、ワークとバケーションは相反することなんです。仕事が嫌だから旅に出るわけで、それを融合すること自体が論理矛盾しています。

これに対する自分勝手な解決策やヒントが、“しあわせ”の定義なんですけど、これが実はアフターコロナにおいては徐々に変わりつつあるんだろうなと見ています。

関西大学社会学部 教授の松下慶太氏が『ワークスタイル アフターコロナ』という本を上梓されて、それが若い世代に話題となっています。ワーケーションの弱点を突いている本なのですが、特に面白いのは「遊びの中でクリエーションをする時代になってきた」という提言です。業種によって働き方はもちろん異なりますが、少なくてもクリエーションに携わっている人たちからすると、遊びながら仕事をするスタイルはこれからどんどん増えていくだろう、という解説をしています。

結局、このコロナ禍は、自分たちが考えてきた仕事の仕方や休日の取り方・過ごし方の事実上の標準値が移り変わってきている過渡期だと思います。

遊びと仕事の狭間がなくなってきている時代に何が一番必要かと言うと、自分が暮らしてもいいような場所で仕事をすることです。

このことにおいては、長野県においても気付かれていない部分で、観光とワーケーションの概念が違うと、これからの先の進化はないのでは?と思います。

軽井沢のワーケーション(リゾートテレワーク)。この施設は北欧建築と家具で構成されており、サーキュラーエコノミーを実践する最先端のワーケーションスタイルを導入している。

後編は以下オレンジボタンからご覧ください。

後編 〜観光地におけるファン作り、インバウンド再開に向けて〜

(写真提供:長野県観光機構)